腰部の後遺障害

交通事故の打撲などで腰部を受傷したことによって残存する後遺障害は、大きく分けて3種類あります。

(1) 脊髄損傷による神経症状の残存
(2) 脊柱の変形や脊柱損傷による運動障害
(3) 腰部受傷後の腰部の痛み(腰痛)や、腰部から足にかけての痺れといった神経症状の残存
 

1番目は、交通事故による脊髄の損傷によって足が動かなくなってしまう等の症状が残存する場合です。

2番目は、脊柱等が骨折したことによって、脊柱が変形してしまったり、脊柱に運動障害が残存してしまったりする場合です。

3番目は、腰や足に痛みや痺れが残るといった症状です。
交通事故の後遺障害としては最も多いケースです。

これら3種類の後遺障害について、詳しく述べたいと思います。

(1) 脊髄損傷による神経症状の残存

人体の神経系は、脳および脊髄から構成される中枢神経系と、中枢神経系以外の末梢神経系に分けられます。交通事故による強い衝撃により、小脳から腰椎に伸びる中枢神経である脊髄に損傷を負う場合があります。

脊髄を損傷すると、損傷された脊髄から手足の指先の部分において、運動や知覚に障害が現れます。脊髄損傷による運動や知覚の障害には「完全麻痺」と「不完全麻痺」の2つの分類があります。

①完全麻痺 損傷された脊髄より下の運動機能や感覚機能が消失した状態のこと。全く何も感じないわけではなく、受傷した部分から下の麻痺した部分にかけて、痛みを感じることもある。頚椎を損傷した場合には、四肢全てが動かないという状態になる。
②不完全麻痺 脊髄の一部が損傷して一部が麻痺をしている状態のこと。ある程度運動機能が残っている軽症から感覚知覚機能だけ残った重症なものもある。

 

脊髄損傷の後遺障害認定基準

脊椎損傷による後遺障害の等級と認定基準は次のとおりです。

等級 認定基準
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
①高度の四肢麻痺が認められるもの
②高度の対麻痺(両下肢の麻痺)が認められるもの
③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・排泄・着替等について常時の介護を要するもの
④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・排泄・着替等について常時介護を要するもの
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
①中程度の四肢麻痺が認められるもの
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・排泄・着替等について随時介護を要するもの
③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・排泄・着替等について随時介護を要するもの
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
①軽度の四肢麻痺が認められるもの
②中等度の対麻痺が認められるもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
①軽度の対麻痺がみとめられるもの
②一つの下肢に高度の単麻痺が認められるもの
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
・一つの下肢に中等度の単麻痺が認めら得るもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
・一つの下肢に軽度の単麻痺が認められるもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
①運動性、支持性、巧緻性及び速度について支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの

 

脊椎損傷の留意点

 交通事故による脊髄損傷において、適正な後遺障害等級認定を受けるためには、CTやMRIなどの画像所見(しかも、解像度の高いもの)や、医師作成の後遺障害診断書や神経学的所見など、十分な資料を揃える必要があります。

 事故後のどの段階でどのような検査をしておくべきか、また、認定手続の際に、どのような書類が必要になるかは、交通事故事件の経験が豊富な弁護士にご相談されることをお勧めします。

(2) 脊柱の変形や脊柱損傷による運動障害

脊柱は、頭から腰まで一本の棒のようにつながっており、部位によって頸椎(首)、胸椎(胸)、腰椎(腰)と分けられます。

脊柱のうち、頸椎と胸腰椎とでは主たる機能が異なっています。頸椎であれば、主に頭部を支える機能を担っており、また、胸椎や腰椎は主として胴体を支える機能を担っています。このことから、障害等級の認定にあたっては、原則として頸椎と胸腰椎は異なる部位として取り扱われています。

脊柱の変形障害

脊柱の変形障害による後遺障害の等級と認定基準は次のとおりです。

等級 認定基準
6級 エックス線写真、CT画像またはMRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認できる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。
(ア)せき椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。
この場合、「前方椎体高が著しく減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上であるものをいいます。
(イ)せき椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。
この場合、「前方椎体高が減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上であるものをいいます。
8級 エックス線写真、CT画像又はMRI画像によりせき椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。
(ア)せき椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているもの。
(イ)コブ法による側彎度が50度以上であるもの。
(ウ)環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む。)により、次のいずれかに該当するもの。
a. 60度以上の回旋位となっているもの
b. 50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
c. 側屈位となっており、X線写真、CT画像、MRI画像により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
このうち、ア及びイについては、軸椎以下のせき柱を可動させずに(当該被害者にとっての自然な肢位で)、回旋位又は屈曲・伸展位の角度を測定します。
11級 次の①~③のいずれかに該当するものをいいます。
①せき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真、CT画像又はMRI画像により確認できるもの
②せき椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかのせき椎に吸収されたものを除く)
③3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

脊柱の運動障害

脊柱の運動障害による後遺障害の等級と認定基準は次のとおりです。

等級 認定基準
6級 次の①~③のいずれかにより頸部及び胸腰部が強直したものをいいます。
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎圧迫骨折等が存しており、そのことがエックス線、CT画像、MRI画像により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8級 次の①もしくは②に該当するものをいいます。
①次のいずれかにより、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
(ア) 頸椎又は胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真、CT画像、MRI画像により確認できるもの
(イ) 頸椎又は胸腰椎にせき椎固定術が行われたもの
(ウ) 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
②頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの

(3) 腰部受傷後の神経症状の残存

腰部受傷後に腰や足に痛みや痺れが残存するという症状は、交通事故による後遺障害の中でも最も多いケースです。このような神経症状の残存による後遺障害の等級と認定基準は次のとおりです。

等級 認定基準
12級 神経系統の障害が医学的に説明できるもの
14級 神経系統の障害が医学的に説明可能なもの

12級の「医学的に説明できるもの」と14級の「医学的説明可能なもの」は同じことを言っていているようにも見えますが、実務的な認定基準にはかなりの差があります。
腰部受傷後の神経症状について12級が認定されるためには、体に残存してしまった症状について、レントゲンやMRIといった画像検査等他覚的検査によって症状の存在が完全に証明されることが必要と考えられています。例えば、腰部のMRI検査によって、足の神経を支配している神経根が椎間板等によって圧迫していることが確認できる場合などです。
これに対して、神経系統の障害が医学的に証明されなくとも、医学的に推定される場合には14級が認定されることになります。
14級が認定されるための要素としては、症状を裏付ける他覚所見の他、受傷してから症状固定と診断されるまでの治療経過、治療内容、症状固定後に通院を継続している場合には、その通院状況、交通事故による車両等の損傷状況が挙げられます。
後遺障害等級認定申請を行う際に、どのような資料を用意できるかで等級の結果はかなり変わってきます。そして、等級の結果次第で賠償される金額にも大きな差が出てくるのです。
後遺障害等級認定申請の前には、交通事故問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故による腰部の後遺障害のご相談や、腰部の後遺障害認定や慰謝料に納得がいかない場合など、横浜の弁護士による交通事故相談なら、実績豊富な上大岡法律事務所にお任せください。


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