死亡事故の逸失利益とは?計算方法と職業別基礎収入

弁護士 水口 かれん

 死亡事故の逸失利益(いっしつりえき)とは、交通事故で死亡した被害者が生きていれば、今後就業して得られたであろう将来の収入が失われたことによる損害です。

 ただし、就労年数と給料を掛けた全額が損害賠償として認められるわけではありません。逸失利益の計算方法をご説明いたします。

死亡事故の逸失利益の計算方法

逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)

基礎収入

 基礎収入とは、被害者が生きていれば、就業して得られたであろう1年あたりの収入をいいます。職業別の基礎収入は後述します。

生活費控除率

 死亡事故の場合、被害者が得られたであろう将来の収入が失われていますが、他方で、生きていれば当然支出するはずだった生活費も支出せずによくなっています。

 この将来支出するはずだった生活費を一定程度控除する必要があることから認められたものが、生活費控除率です。

一家の支柱 被扶養者一人の場合・・40%
被扶養者2人以上・・・30%
女性(主婦、独身、幼児等含む) 30%
男性(独身、幼児等含む) 50%

 

就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 ライプニッツ係数とは、将来得られたであろう収入を現在の価値に引き直して計算するための係数です。

 就労可能年数に対応するライプニッツ係数(または新ホフマン係数)は、原則として、67歳までを就労可能年数としています。

 およそ55歳以上の高齢者(主婦を含む)については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長期の方を使用します。

 未就労者の就労の始期については、原則として18歳です。

逸失利益を計算するための職業別基礎収入

 職業別に逸失利益を計算するための基礎収入をご紹介いたします。詳細は、弁護士にご相談ください。

(1)有職者(給与所得者)

 有職者(給与所得者)の基礎収入は、原則として事故前の「交通事故前の税込年収(額面)」になります。

 もっとも、若くして死亡された被害者の逸失利益を計算する場合、被害者が将来昇給することも加味して逸失利益が計算されることがあります。

(2)家事従事者

 家事従事者の場合は、原則として「女性労働者の平均賃金額」を基礎収入とします。

 もっとも、被害者が高齢者の場合、女性労働者の平均賃金から減額修正されることがあります。

(3)無職者

 交通事故によって死亡した人が無職の場合、逸失利益は学生・生徒・幼児等と高齢者等によって異なります。

・学生・生徒・幼児等

 学生・生徒・幼児等は、男女別の平均賃金額を基礎収入とすることが多いです。

 被害者が大学生の場合や大学入学が予想される場合には、男女別の大学卒業者の平均賃金額を採用することもあります。

・高齢者

 高齢者は、就労の蓋然性(労働能力と労働意欲)があれば、男女別、年齢別の平均賃金額を基礎とすることが多いです。

(4)失業者

 失業者の場合でも、死亡事故によって逸失利益による損害賠償ができます。労働能力、労働意欲があり、就労の蓋然性があれば、失業前の収入を参考とします。

 失業前の収入が平均賃金以下の場合には、平均賃金を得ることができることを立証することで、男女別、年齢別の平均賃金が採用されることがあります。

(5)年金受給者

 死亡事故に遭った際に被害者が年金を受給していた場合、年金の逸失利益(事故に遭わなければ受給できたはずの年金についての逸失利益)を請求できることがあります。

 裁判例で認められているものとしては、国民年金、老齢厚生年金、農業者年金、地方公務員や国家公務員の退職年金給付、私学共済年金などがあります。

 また、死亡事故に遭った際に年金を受給していなくても、既に年金受給資格を有している等の事情がある場合には、年金受給開始前に事故に遭った人でも将来の年金に対する逸失利益が認められることがあります。


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